「双子ってかわいいな」と羨ましく感じる声をよく耳にします。しかし実際には、産科医にとって多胎妊娠は「ハイリスク妊娠」と考えられています。
母親にとっては、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開となる可能性、さらに出血量が増えるリスクが高くなります。
胎児にとっては、妊娠中に胎児を失う可能性があるほか、最も多い問題はやはり早産です。早産児(未熟児)は低出生体重で肺が未成熟なことが多く、人工呼吸器の使用や集中治療室への入院が必要になる場合があります。自力で呼吸でき、口から十分な栄養を摂取でき、正常な体温を維持し、体重が安定して増加するようになるまでは退院できません。長期的には、子どもの成長、聴力、視力、さらには学習能力に影響を及ぼす可能性もあります。
赤ちゃんが早産で生まれた場合、早産による影響が長期間続く可能性があります。そのため、未熟児を育てることは、ご家族にとって精神的にも経済的にも大きな負担となる場合があります。
妊娠において最も重要なことは、健康で正常な子どもを出産し、育てることです。以前は、胚培養技術、設備、培養液、凍結保存技術が現在ほど進歩していなかったため、妊娠率を高める目的で、1回の胚移植で複数の胚を移植する傾向がありました。その結果、多胎妊娠の割合が高くなり、ご家族への負担だけでなく、母体と胎児双方の妊娠リスクも増加していました。
現在では生殖医療技術が継続的に進歩しています。過去10年間、国内外の生殖医療分野では、健康な単胎児を正期産で出産し、多胎妊娠を回避することを目標として、「単一胚移植SET」が推奨されています。当院もこの考え方を強く支持しています。
近年、台湾における「単一胚移植(SET)」の割合は24.9%(2019年)、日本では82.1%(2016年)でした。また、日本では体外受精による双胎出産の割合が約3%であるのに対し、台湾では24.1%と、大きな差があります。
衛生福利部国民健康署の統計によると、早産児にかかる年間医療費は、高額な新生児医療費の中でも大きな割合を占めています。多胎妊娠を減らす目的から、2021年7月1日に開始された試管嬰兒補助方案(体外受精助成プログラム)では、1回の胚移植数について、35歳以下の場合は1個、36歳以上の場合は最大2個までという条件が設けられています。これにより、一般の方、医療界、政府の三者にとってメリットが期待できます。
一般の方:多胎妊娠やハイリスク妊娠の割合を減らし、安心して健康な正期産児を出産できる可能性を高めます。
医療界:生殖医療センターでの治療とケアを充実させると同時に、多胎出産や未熟児によって生じる産科・小児科医療への負担を軽減できます。
政府:ハイリスク妊娠や早産の割合を減らすことで、重症医療にかかる費用の一部を軽減し、少子化問題の緩和にもつながる可能性があります。
試管嬰兒補助方案(体外受精助成プログラム)の導入初期には、複数の胚を移植できないことによって妊娠率が低下するのではないかと心配する医師や患者様も少なくありませんでした。しかし、当院では「単一胚移植」の割合が67%と、台湾国内平均の24.9%を大きく上回っているにもかかわらず、妊娠率は60%という高い水準を維持しています!体外受精における「単一胚移植」は、非常に安全で実行可能な方法です。
